シチダンカのまとめ

シチダンカ

山本武臣氏が「日本アジサイ協会 会誌第2号」でシチダンカの歴史につきまして詳しく書かれていますが名前の由来が不明と有りますので推察を書いてみます。○ダンカとして知られていますのに 三段花、ロクダンカ:六段花、シチダンカ:七段花(七檀花、七段玉、八重がく、ちょうでまり)、ハチダンカ、九段花、ギョクダンカ:玉段花(玉檀花)です。注:(ギョクダンカの一種でハチダンカ:「遠山氏採収[サク]葉目録. [1]、及び三段花、九段花:山本武臣氏:日本アジサイ協会 会誌第2号)。「本草図譜」に山丹花 三段花 紅繍毬とありサンタンカIxora chinensisです。「学圃雑疏」に一繍球亦無足取初見閩人來賣一花云是紅繍球倭國中來(途中略)山丹と有ります。「草木弁疑」はこの「学圃雑疏」の記述を引用して山丹は歇你戞孤ヘニカク(ベニガク)と書いています。「訓蒙図譜」は紅繍毬は紫陽花としています。江戸時代にサンタンカが日本に外国から入ってきて、江戸時代の本草の本では山丹の記述に混乱が生じた様で、記述を読んでもユリ、アジサイ、サンタンカなのかややこしく、そもそも勘違いしているケースも有ります。ロクダンカ(「梅園草木花譜夏之部. 5」)、ハチダンカ、ギョクダンカがタマアジサイ(ギンガソウ:方言に ゆうだちぐさ ぼうずぐさ)の品種です。七段花(七段玉)を見ますと、玉と花が同じ意味だと考えられます。こうなると七段花の名前は単純に数字的な問題とこの手のタイプに段花を使った為だと推測します。コアジサイの別名はなひとえ(このひとえは一重、単のどちらでしょうか)が1とし、四ひらの花またはアジサイをシバハナと呼ぶ所が有り、四葉花でこれらが4。2と5が抜けています(ヤマアジサイの自生地では装飾花が部分的に2枚や1枚のものが有ります)。もしかすると有るかもしれませんが、それともこの数字に当てはまるタイプが無かったです。もしかしたらアジサイ以外の花にも八重花等で特殊な呼び方が有るのかもしれません。七段花や玉段花の花の説明で千葉と書いて有りますがアジサイだけではなく菊の説明でも多様されています。中国の古い文献でも千葉蓮花等多く用いられる表現です。
シチダンカの名前の由来として萼片が七段に重なるというところからきているとネットでは出ていますが、どう見ても七段に重なっては咲いていません。

「屋漏堂花譜」七タンアヂサイ

「加賀国産物産志」 七タンアチサイ

「救荒本草通解」七ダンクワ

「草花写生図」 七段クワ

「袖珍鑑」シチダンクワ

「百品考」 ヒチダンクワ

「物品識名拾遺」シチダンクワ

「本草図譜」シチダンクワ

「本草多識編」七ダン花

七段花の読み方で七はシチかヒチかナナとも読めますがシチが正解です。江戸時代でも七は縁起の良い数字ですので、シチダンカは特別な意味合いを感じたかもしれません。

「日本植物誌」のシチダンカ Hydrangea stellata Sieb. et Zucc.の図版を見ますと八重咲きで薄青色です。「日本植物誌」のシチダンカは薄青色の八重の装飾花と花軸に退化した両性化がまばらについています。「日本植物誌」の薄青色のHydrangea stellata と、赤色で発色するシチダンカは果たして同種でしょうか。

A Revision of the Species of Hydrangea (Hydrangeaceae) Described by Siebold and Zuccarini, Part 1 Hideaki Ohba1 and Shinobu Akiyamaにシチダンカの植物標本の写真が出ています。

東京都立大学牧野標本館の牧野シーボルトコレクションの公開画像にもシチダンカの植物標本が有ります。

「梅園草木花譜夏之部」に額一種アマチヤ キンキンサウ(キンギンサウ 金銀草:アマチャ キンキンサウの部分は単にアマチャの説明でこの八重花とは関係ない説明です)花発スル時惣桃色日ヲ歴薄蒼色テニ変ス(開花した時はすべて桃色で日がたつと薄蒼色になる) と有ります。「日本植物誌」のシチダンカに比べますと装飾花の数が多く別種に見えなくはありません。どちらかと言いますとガクアジサイの八重花に見えます。

「日本植物誌」図版のシチダンカ  八重花でテマリ咲きではない。薄青色

「本草図譜」一種べにがく 八重化でテマリ咲き。 薄赤色

「草花写生図 2巻 七段クワ 八重花でテマリ咲きではない。薄赤色

「聚芳図説 」3巻 七段花  八重咲でテマリ咲き。白黒線画  

「本草図譜」 2巻. [1]  シチダンクワ 八重咲でテマリ咲き。白黒線画

「梅園草木花譜夏之部」に額一種アマチヤ 花が枝二本に咲いています。

一つは八重花でテマリ咲きではない。残りは八重花でテマリ咲き。桃色から薄碧色に変わると書いて有ります。この中で金銀草 岩甘茶 八重額 紅額草 小額草と関係ないものを列記していますが八重額はこの図と関係ある名称だと思います。

「救荒植物通解」七ダンクワ花戸アリ 千辨ノガク也 形状カクニ似テ葉ハ狭ク花形重辨ニテ八九或ハ十余辨アリテ尖リ 初淡紅後紅色ニ変ス 中ニ小花蘂ナクテ八仙花ノ如クニシ小ナリ

「物類称呼」三巻(国会図書館では5巻の合本版が公開されています) 籩箕柴 七だんくわ○甲州にて○ちやうてま里といふ花の色みどりにして四出 一ト房に数百花付く葉茎祢ば里て衣に付きはなれがたし
(籩箕柴は「廣群芳譜」や「本草綱目」の名醫別錄に籩箕柴 時珍曰生山中。王永輔 惠濟方 治瘡取皮煎湯服須臾癢不可忍以手爬破出毒瓦斯即愈に出てきますが、七段花とは関係のない中国の薬草の様ですのでなぜ七段花と結び付けたかは不明です。ただし、七だんくわ○甲州にて○ちやうてま里といふまでは七段花の説明だと思います。)

「A Revision of the Species of Hydrangea (Hydrangeaceae) Described by Siebold and Zuccarini, Part 1 Hideaki Ohba and Shinobu Akiyama」にシチダンカの植物標本 八重花で花数の少ないテマリ咲きで「本草図譜」 2巻. [1]のシチダンクワににています。

東京都立大学牧野標本館の牧野シーボルトコレクションの公開画像のシチダンカの植物標本  八重花で花数が多いテマリ咲き

アジサイは栽培環境でテマリ咲きになる場合が有り、秋に咲いたヤマアジサイが一時的にテマリ咲きになる場合も有ります。

これらの書物に出てきます八重咲のアジサイが同個体なのか別個体なのか、ヤマアジサイだけだったのか、ガクアジサイの八重も有ったのか研究する余地が有る様に思え、シチダンカそのものが一種類だったのかも疑問が有ります。

現在流通していますシチダンカを江戸時代のシチダンカとするのは問題が有ります。栽培品が残っていれば良かったのですが、山中で発見された個体なので別名にした方が無難だと思います。

「Journal of the Arnold Arboretum」volume Ⅲ 1922の中でERNEST H WILSONのHydrangea serrata var. stellataの解説では、これは不稔性の品種でピンクローズと白色の花が混在していており、尖った花弁である。Sieboldは京都周辺の栽培品と記録している。MatumuraによるとそれはShichidankwaとして知られ、日本の庭園では普通の植物であった。

「山本武臣:会報2号」で、シチダンカの解説:Maximowiz「植物誌」1867刊 stellataは都と大阪で栽培され、江戸では稀であると書かれています。

シチダンカがいつ頃まで栽培されていたかはわかりませんが、「日本植物総覧著者 牧野富太郎, 根本莞爾 編 大正14年」でシチダンカ植栽と有りますのでこの頃までは栽培されていたかもしれません。


求軟文庫 漫話樹草譜(3) 宮南 裕 著をやっと手に入れました。1-4巻が古書で売られていますが。アジサイがどの巻に出ているか不明でしたので結局全巻買いました。世の中にはこれ程いろんな分野から植物に関して調べた人がいると感心いたしました。この本でアジサイと薬玉に関する記事の出典が書かれているかと期待しましたが、残念ながら書かれていませんでした。「国史大辞典」のクスダマの説明文にはあぢさゐが引用されていますが、それ以上の事はわかりません。


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